2011年10月31日月曜日

ペンは剣に弱し

エドワード・ブルワー・リットン











  最近の「朝日」や「読売」など大新聞の、TPP(環太平洋経済連携協定)参加をさけぶ社説の連続には、あきれてしまいます。
   「開国をいそげ、さもないと、日本は世界から取りのこされる」と、根拠のないおどし文句をくりかえし、世論を誘導しようと必死です。

   先日、大新聞の論説委員OBやジャーナリストの集まりである「国民政治協会」によばれて、話をしたときも、もと大新聞の論説委員の方から、「経済成長に役立つのに、なぜ共産党はTPPに反対するのか」と質問をうけました。
私のほうから「どう役に立つのでしょうか」と聞き返しましたが、明確な答えはありませんでした。

   そんななか、けさの毎日新聞二面(「風知草」)には、めずらしくTPP参加に疑問をていするコラムがのっていました。
   ただ、農民詩人・星寛治さんのことばをとりあげながらも、結局は経済成長か農業かの二者択一で終わっています。また、「国防上の負い目から、アメリカの市場開放要求に付き合わざるをえないという事情は理解できる」というのも、基礎的な知識に欠けています。日本はアメリカに守ってもらっているのではなく、アメリカの軍事戦略の手伝いをさせられているのですから。
   おどろいたのは、五面の社説です。なんと二面とまったく逆の立場。TPP反対論は「米国陰謀説」にもとづく「的外れ」だと、アメリカからの圧力があった事実を隠して、一刀両断に切り捨てています。結局、これでバランスをとったつもりなのか。「ああ、毎日、おまえもか」と、紙面を閉じました。

   いっぽう、「エコノミスト」(11/8号)では、「論壇論調」のなかで、マレーシア、シンガポールなどのTPP参加国のなかで、アメリカの市場開放要求にたいする警戒論が高まっていることを報じています。

   政治家はたたいても、権力の本丸であるアメリカと財界には、ペンの矛先をむけない大新聞。
   剣(権力)に弱いペンも、おちるところまでおちてきたと感じながら、せめて事実だけは報道してもらいたいものだとおもいました。


※写真は、エドワード・ブルワー・リットン(1803-1873年)
戯曲「リシュリュー」のなかで、「ペンは剣よりも強し」の名文句を残す