2011年11月4日金曜日

絵本のすすめ11-「コルチャック先生」














  小児科医であり教育者でもあったユダヤ人、コルチャック先生の感動の実話は、かずかずの本にもなり、ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督によって映画化もされています。

   しかし、トメク・ボガツキの絵本(柳田邦男訳、講談社)ほど、コルチャック先生の子どもにたいする愛情の深さと時代への憂いを、わたしたちの胸にじかに刻みこむものはないでしょう。

  コルチャック先生は、ユダヤ人の子供たちのための孤児院「孤児たちの家」と、ポーランド人の子供たちの施設「僕たちの家」をつくり、子どもたちの自主的な活動を奨励します。その教育方針は世界の教育機関に大きな影響をあたえるものでした。

  しかし、時代はナチスドイツが台頭。ポーランドはナチスに占領され、コルチャック先生も、かれの孤児院の子どもたちも、ユダヤ人狩りの対象になっていきます。

   すでに教育者として有名だったコルチャック先生の特赦をもとめる声や、救出のうごきもありましたが、コルチャック先生は、自分だけが助かるわけにはいかないと、子供たちとともに、トレブリンカ強制収容所への貨車に乗りこみます…。

   一枚、一枚の子どもの絵が、あまりにもいとしく、かなしい。


   コルチャック先生の「すべての子どもたちは愛され、教育をうけ、いのちを守られなければならない」という情熱は、いまの国連「子どもの権利条約」にうけつがれているのです。