2011年11月26日土曜日

乱読のすすめ26~28-母を想う三冊の文庫本










   この1週間、国会内の本屋さんや駅の書店をのぞいても、読みたくなるような本に出会えません。大きなブックセンターを1日かけてゆっくり回ってみたいとおもいますが、当分は無理のようです。

   夜中に、なにか再読するものはないかと、支離滅裂に分類された自宅の本棚をかきわけていると、前後二段に積まれた本の奥に、母を題にした文庫本が、三冊きれいに並んでいました。

   なぜその三冊だけ、関連性をもって鎮座しているのか。 自分で並べた記憶もなく、母という神聖かつ絶対的な存在が、みずから引き寄せあって確固たる位置をしめたとしか考えられませんでした。

   一冊は、申 京淑(シン・ギョンスク)「母をお願い」(集英社文庫)。
   ソウルでくらす4人の息子と娘が誕生日を祝ってあげようと、田舎の老父母をよび寄せますが、老母が駅で行方不明になってしまいます。母がいなくなって初めて、その存在の大きさと母のたどった人生を知る子供たち…。韓国初の世界的ベストセラーになった小説です。









 
   二冊目は、三浦綾子「母」(角川文庫)。
   特高警察に虐殺された小林多喜二の母セキさん。セキさんの生れは秋田県。秋田の方言なまりで、セキさんが多喜二と、多喜二のまわりでおきたことを語ります。誰をもゆるす、おおらかな心のセキさん。多喜二を最後まで信頼し、愛しぬきました
   多喜二もお母さん似で、心優しい青年でした。その多喜二と遊郭から身請けされたタミちゃんの恋も悲しい。










   三冊目は、女優であり母である黒木瞳さんのエッセイ「母の言い訳」(集英社文庫)。
  娘にあれもこれもしてやれない、外ではたらくお母さんのもどかしさ。ごめんね。そんなお母さんだけれど、どれだけあなたを愛しているか…。日本文芸大賞エッセイ賞受賞。