2012年12月24日月曜日

絵本のすすめ58-約束 「無言館」への坂をのぼって


窪島誠一郎作 アリス館














   長野県上田市塩田平、のどかな丘陵地の頂きに戦没画学生慰霊美術館「無言館」があります。
   第二次世界大戦で戦地に散った画学生30余名、300点以上の遺作が展示されています。それは館主の窪島誠一郎さんたちが全国各地の遺族を訪ね歩いて預かったものです。

 絵本『約束ー「無言館」への坂をのぼって』のなかで、窪島さんはいいます。

 「なぜ、『無言館』っていう名まえをつけたかって?」

2012年12月20日木曜日

函館の青柳町こそかなしけれ

函館postcard「啄木の詩」より














       函館の 青柳町(あをやぎちやう)こそ かなしけれ

       友の恋歌 矢ぐるまの花
                          石川啄木

2012年11月26日月曜日

乱読のすすめ72-深夜の赤信号は渡ってもいいか?

富増章成 さくら舎













   愛媛県の松山空港で、時間つぶしにとおもって買った一冊。読んでみると、意外におもしろかった。
   たしかに深夜、車がまったく通らない道路を赤信号で待たされているときほど、不合理な気持ちにさせられるときはありません。

2012年11月21日水曜日

脳みそに働きかけてみよ

私の大好きな水彩色鉛筆画家
鈴木周作さんの作品です














   衆議院が解散になった16日の夜。仙台市で、弁護士さんたちによる「『橋下維新の会』を考えるつどい」が開かれました。
   私が少し報告をさせて頂いたあと、参加者で活発な議論をしました。
   さすが弁護士のみなさん。私がお話しするまでもなく、改憲や弱肉強食の新自由主義をかかげる橋下「維新の会」の危険性や政治手法の欺瞞性はしっかり見ぬいておられました。

   問題は、どうやって彼らの台頭を阻止するのか。
   「共産党の出番だ」といってくださる方もいましたが、「民主党には裏切られたが、だからといって共産党に入れてもなあ」と、はっきりおっしゃる方もいました。

2012年11月11日日曜日

絵本のすすめ57-We Pray for Japan(日本のために祈ります)













   友人の福島かずえさん(日本共産党宮城二区衆院予定候補、元仙台市議)から、「パウロ・コエーリョの絵本が出たよ」とメールをもらいました。
   パウロ・コエーリョは、乱読のすすめ63『ピエドラ川のほとりで私は泣いた』でご紹介したブラジルの作家。新刊の絵本とは『雲と砂丘の物語』(TOブックス)です。さっそくアマゾンで入手して読みました…。
  雲が砂丘に雨を降らせ「天国」にするという、いたってシンプルなお話。恋した相手に自分の存在をかけて…。
   うれしかったのは、本の最後にあった、パウロ・コエーリョのことばです。

2012年11月7日水曜日

乱読のすすめ71-松下幸之助は泣いている


写真
しんぶん赤旗 11月3日
ビラに手を伸ばす通行人ら 大阪門真市










   いま、パナソニック、ソニー、NEC、IBMなど電機・情報産業の大企業が、13万人にもおよぶ首切り・リストラをおこなっています。
   やり方も、繰り返しの退職強要や突然解雇を通知して会社から締め出すなど、違法行為がまかりとおっています。

   11月2日、大阪労連や日本共産党などでつくる「電機等大企業のリストラから雇用と地域経済を守る実行委員会」のメンバーが、大阪府門真市のパナソニック本社前の駅で「退職強要をはね返せ」と宣伝行動をおこないました。
   しんぶん赤旗の記事によれば、同社ではたらく電機・情報ユニオンの組合員Aさんはマイクをにぎって、つぎのように訴えたそうです。
  「松下幸之助が、草葉の陰で泣いている」
 「昔、幸之助さんは『うちの会社は人をつくっています』と言っていた。首切りで人は育たない」

   昨日、本屋さんに立ち寄ったら、Aさんの言葉とおなじ、『松下幸之助は泣いている』(朝日新聞出版)という本を見つけました。

2012年11月6日火曜日

じじ放談13-ほんとうの対決軸はどこにある

じじん党乙川議員とみんし党甲山議員








   みんし党・甲山議員
   「おつとっと、乙さん、ひさしぶり。まだ生きてたんかいな」
   じじん党・乙川議員
   「あんたこそ、しぶといなあ」
   甲山議員
   「いや、もう歳や。最近、じぶんの足につまづくねん」
   乙川議員
   「ワシもときどき、右足が先か左足が先か考え過ぎて、こけるんや」
   甲山議員
   「その点、石原さんは80歳にもなって元気やなあ。自分では立ち上がれない70代議員たちの手を引っぱって立ち上がらせようとしとる」
   乙川議員
   「高齢者が高齢者を介護する日本の現実や」
   甲山議員
   「ところで、つぎの選挙は、『第三極』の連中が伸びて、ウチは大負けかいな。ワシもどっか他の党に入れてもらおかな」

2012年11月5日月曜日

絵本のすすめ56-神々の母に捧げる詩

「神々の母に捧げる詩」
(福音館書店)















   2011年6月11日のブログ「わが母の教え給いし歌」を読んで、山形県鶴岡のM・Kさんが素敵な歌を寄せてくださいました。

    あたたかい  母のぬくもり  懐かしく
    夕暮れの道  遠く見つめる

    母の背に  歩み進める  道見つけ
    たゆまぬ努力  今日も続けて

    一杯の  コーヒー香る  束の間の
    時を楽しみ  ページをめくる

2012年10月31日水曜日

乱読のすすめ70-ナショナリズムは「アホの壁」

 












   先日、盛岡から東京まで約3時間の新幹線車内で読んだのが、石原慎太郎『新・堕落論』と筒井康隆『アホの壁』(どちらも新潮新書)の2冊でした。

   案の定、石原さんの本は、ナショナリズムの化石。最初から最後まで、開いた口がふさがりませんでした。
   いっぽう、かつて作家の田辺聖子さんから愛情をこめて「いちびり」と評された小説家・筒井康隆さんの本は笑いがとまらない。筒井さんにかかると、ナショナリズムは「アホの壁」だそうです。

2012年10月29日月曜日

スーパー公務員


絵 鈴木周作










   10月27、28日の両日、札幌市において、「断ちきろう!貧困の連鎖を~許すな!金利引き上げ」をテーマに「第32回クレサラ被害者交流集会」が開かれ 、わたしも参加しました。

   3年前、自民党政権を追い詰め政権交代の流れをつくるうえで大きな役割を果たしたのが「反貧困」の大運動。その運動のきっかけを作ったのは、毎年この「交流集会」に結集する、サラ金被害と闘ってきた弁護士、司法書士や被害者の会の皆さんでした。

   2006年に金利引き下げの貸金業法改正を実現したあと、多重債務のおおもとにある貧困問題そのものに取り組もうということになり、生活と健康を守る会や全労連、連合など幅広い団体によびかけて、「反貧困」のネットワークを広げていったのです。

   札幌の集会で久しぶりにお会いしたのが、奄美市の福祉政策課の職員、禧久(きく)孝一さん。
   禧久さんは、長年にわたり、借金自殺を防ぎ、多重債務者の生活再建を支援してきました。
   2006年から2007年にかけて、マスコミが禧久さんの活動に注目。NHKの「にっぽんの現場」など多数のテレビや新聞で取り上げられました。また禧久さんは2007年、政府の「再チャレンジ支援功労者」にも選ばれました。当時、あるマスコミは禧久さんのことを「スーパー公務員」と表現しました。

2012年10月26日金曜日

乱読のすすめ69-ドビュッシーと金子みすゞ

 

 










   「ドビュッシーとの散歩」(中央公論新社)は、ピアニスト・青柳いづみこさんが、フランス近代の大作曲家、クロード・ドビュッシーのピアノ曲に寄せて、ご自分のおもいを綴った、おしゃれな短文集です。
   ドビュッシーのピアノ曲でいちばん有名なのはなんといっても、「月の光」(ベルガマスク組曲の第三曲)。青柳さんによると、この曲のもとになったのは、フランスの詩人ヴェルレーヌの「月の光」だとか。
 
 お前の心はけざやかな景色のようだ、そこに 見なれぬ仮面して仮装舞踏のかえるさを、
 歌いさざめいて人ら行くけれど  彼の心とてさして陽気ではないらしい (堀口大學訳)

  …どうしてこの詩があの甘美な「月の光」になったのかよくわかりませんが、わたしの場合、「月の光」を聴くと、いつも思い浮かぶのが、金子みすゞさんの世界です。

2012年10月24日水曜日

乱読のすすめ68-いじめでまとまる人間社会?















   昨日、福島県からの帰りの新幹線で、精神科医・香山リカさんの最新刊「『独裁』入門」(集英社新書)を読みました。大阪の橋下氏を念頭において、現在の独裁型ヒーロー待望論に警鐘を鳴らす内容ですが、新しい論点はないようにおもいました。長期にわたる閉そく感を打破したいという人びとの苛立ちが独裁者を登場させてしまう…香山さんだけでなく、良識派の人たちがすでに指摘してきたことです。

   私が注目したのは、香山さんが本書で引用している社会学者・野村一夫さんの分析です。

2012年10月22日月曜日

歯痛と演説

函館ポストカード「啄木の詩」より











   昨日は、午前中、茨城県つくば市の市議選の応援演説を二か所おこなったあと、午後は群馬県衆院三区の演説会でお話ししました。
  ところが一昨日の夜から激しい歯痛に襲われており、行きつけの国会の歯科診療所はお休みだし、市販の痛みどめは効かないし、自分史上、最悪のコンデションでの演説となりました。

   ふつうなら話している間は緊張して痛みなど忘れるはずなのに、口をあけたりしめたりするだけでいちいち痛むので、忘れることもままならない。

   またこういうときに限って、どういうわけか、話しながら、さまざまな雑念が浮かんでくるのです。

2012年10月21日日曜日

映画のすすめ18-親切はさっと皿にもれ









   映画好きの友人が「絶対おもしろい!」というので、フランス映画「最強のふたり」を観に行きました。 なるほど、これは傑作。フランスはもちろんヨーロッパ各国で空前の大ヒットを記録したのもうなずけます。
   パラグライダーの事故で首から下が麻痺してしまった富豪の中年男フィリップと、介護役として雇われた前科のある黒人青年ドリスの、ユーモアに富んだ実話にもとづく友情物語。おもしろいだけでなく、人間の尊厳とはなにか、介護とはなにかについても考えさせられます。

2012年10月19日金曜日

絵本のすすめ55-だれにもいえない















  わたしはこのごろ、教室のみんなの顔を一人ひとり見ることがある。一人ひとりまるでちがう顔をしている。そのことにおどろく。
   わたしたちは、べつべつの日に、べつべつの病院で生まれたんだ、と思う。
   生まれたあと、四年生になるいままで、それぞれがまったくちがう家で育ってきた。一人ひとり、すきなものもちがうし、得意なものもちがう。なにもかもちがう三十一人がこうして一つの教室で、毎日同じ勉強をしているのだ。

   そして先生からは「みなさん」と、ひとまとまりに呼ばれている。呼ばれると、とたんに三十一人がひとつのかたまりになる。
   「みなさん」のなかにいるのは安心だ、と思うこともある。
   「みなさん」というのが、わたしのことのような気もするし、わたしのことじゃないような気もするから。まるで背の高い草のなかに隠れているような気もちになるから。

   でも。

2012年10月15日月曜日

乱読のすすめ67-ヒットラーのカナリヤ

  

   日本共産党は昨日、今日の二日間、第五回中央委員会総会(略称・「5中総」)を開きました。
   志位委員長は幹部会報告のなかで、いまの政治情勢の特徴は、「反動的逆流」VS「国民運動+日本共産党」のたたかいにあると指摘しました。
    「反動的逆流」とは、民主党の「自民党化」、タカ派安倍晋三を総裁に選んだ自民党のいっそうの右傾化、そして「改憲」突撃隊としての橋下「維新の会」、これら総体を指します。
   わかりやすくいえば、日本を戦争する国に変えるための政界の「タカ派、右寄り再編」が進行しようとしている、ファシズム的な潮流が強まっているということです。
  世界の歴史を振り返ると、ファシズムと最初に真っ向から闘ったのが共産党でした。
   現代日本においても、これら「タカ派、右寄り」勢力と正面対決できるのは、政党では日本共産党しかないでしょう。

 ところで、ちょうど「5中総」の休憩時間に読んでいたのが、デンマークの作家、サンディー・トクスヴィグの『ヒットラーのカナリア』(小峰書店)でした。

2012年10月11日木曜日

乱読のすすめ66-話半分にしても、このアメリカ従属は













   TPP参加反対の集会などでよくお話をされる元外務省国際情報局長の孫﨑亨さん。いつも政府の対米従属姿勢をきびしく批判されています。
   著書のベストセラー『日米同盟の正体』(講談社現代新書)や『戦後史の正体』(創元社)も大変興味深い内容ですが、最新刊『アメリカに潰された政治家たち』(小学館)は、陰謀うずまく政治小説のようでおもしろい。

2012年10月8日月曜日

映画のすすめ17-散り行く花


朝もやの曼珠沙華(埼玉県巾着田)











   先日、朝5時に起きて、『しんぶん赤旗』でも紹介された埼玉県日高市にある巾着田(きんちゃくだ)曼珠沙華(まんじゅしゃげ)公園に行きました。早朝にもかかわらず、たくさんの人が「天上の花」曼珠沙華の赤いじゅうたんを楽しんでいました。
   ただ、ピークは過ぎていたようで、よく見ると色あせた曼珠沙華がちらほら。「ちょっと遅かったな」という声があちこちで聞かれました。午後から仕事なので、約22ヘクタールの公園を早足でまわり、写真を撮って帰りました。

   花が散るさまは、いろいろに表現されます。
   桜は散る  梅はこぼれる 椿は落ちる 牡丹はくずれる…
   奈良、平安時代の女流歌人たちは、みじかき花のいのちを見つめ、もっともふさわしい表現をさがしだしました。咲くことだけでなく、散ることにも趣きを感じる民族性です。
   しかし、花の多くはそんなにきれいに散りません。

2012年10月4日木曜日

乱読のすすめ65-「トモダチ作戦」の真相












   昨年12月のブログで、米軍による東日本大震災被災地への救助、支援活動、いわゆる「トモダチ作戦」にたいする疑念をのべました。
   東京新聞論説委員の半田滋さんは、「トモダチ作戦」の本当の目的は、災害救助というより、米軍にわざわざ檜(ひのき)舞台を与え、「有意義な日米同盟」を日本中に刷り込むことにあったと指摘します(『3・11後の自衛隊』岩波ブックレット)。

2012年10月2日火曜日

絵本のすすめ54-ジャスミンはけむりのなかで












   ぼく、ダニエル。まどのそとで、じんじられないことがおきたんだ。
   まちが、とつぜん戦場みたいになっちゃった。人びとがお店におしいり、いろんなものをぬすんでいく。むかいのキムさんの店もこわされた。
   いったい、みんなどうしちゃったの?

2012年9月28日金曜日

それは安酒の酔いに似ている


埼玉県秩父癒しの森「花の回廊」
コスモス満開










   “ 国境線というものが存在する以上、残念ながら(というべきであろう)領土問題は避けて通れないイシューである。しかしそれは実務的に解決可能な案件であるはずだし、また実務的に解決可能な案件でなくてはならないと考えている。 ”
   “ 領土問題が実務的課題であることを超えて、「国民感情」の領域に踏み込んでくると、それは往々にして出口のない、危険な状況を出現させることになる。それは安酒の酔いに似ている。 ”

  …今朝の朝日新聞に作家の村上春樹さんが「魂の行き来する道筋」と題するエッセイを寄稿しています。

2012年9月26日水曜日

映画のすすめ16-Never Let Me Go(わたしを離さないで)

映画「わたしを離さないで」
主演 キャリー・マリガン











   昨日、仙台から帰る新幹線の中で、カズオ・イシグロの小説『わたしを離さないで』(ハヤカワ文庫)を読みました。
  臓器移植と倫理の問題を問いかけた衝撃作。ときどきメールをいただく東京のUさんのお薦めです。
 
   イギリスの片田舎にある寄宿学校「ヘールシャム」では、臓器提供のために集められた「ドナー・チャイルド」たちが、外界から遮断された共同生活を送っていました。…

※「ドナー・チャイルド」
 骨髄や臓器の移植が必要な病気に冒されている兄や姉に骨髄、臓器を提供するために、遺伝子操作を施し人工授精によってうまれた弟や妹のこと。大きな倫理問題をはらんでいる。
   『わたしを離さないで』は、「ドナー・チャイルド」が社会的につくられ、社会的に「提供」されるという「架空世界」を描いています。

2012年9月24日月曜日

乱読のすすめ64-制服の詩人

北原白秋
(1885-1942)











   『からたちの花』 1924年
   からたちの花が咲いたよ。 白い白い花が咲いたよ。…
   からたちのそばで泣いたよ。 みんなみんなやさしかったよ。

   『紀元二千六百年頒』 1941年
   ああわが民族の清明心。正大、忠烈、武勇、風雅、廉潔の諸徳。精神は一貫する。
   伝統は山河と交響し、臣節は国土に根生ふ。大儀の国日本、日本に栄光あれ。…
   大政翼賛の大行進を始め。行けよ皇国の盛大へ向かって、世界の新秩序へ向かって、
   人類の 福祉に万邦の融和に向かって…。

   どちらも、北原白秋の作品です。
   抒情詩人と戦争翼賛詩人の両面をもつ白秋。 しかし、白秋だけでなく、当時の日本国民のなかに「抒情」と「翼賛」は自然に同居していたのではないか。中野敏男さんは近著「詩歌と戦争」(NHKブックス)のなかで、戦争に向かって進んだ民衆の同時代的経験と「責任」を問いかけます。

2012年9月21日金曜日

絵本のすすめ53-おかめ列車


さく いぬんこ 長崎出版














   NHK教育テレビのこども番組ではおなじみ、イラストレーターいぬんこさんの絵本。
   こういう絵とおはなしを描ける人がいたんだ!
   昭和生まれのいちびり関西人としては、まことに惹きつけられてしまいます。

2012年9月18日火曜日

乱読のすすめ63-ピエドラ川のほとりで私は泣いた

訳・山川紘矢・亜希子 地湧社














   “  ピエドラ川のほとりにすわって、私は泣いた。この川の水の中に落ちたものは、木の葉も虫も、鳥の羽さえ、岩に姿を変えて、川底に沈むと言い伝えられている。心を胸の中から取り出して、流れの中に投げ込めるものならば、恋もこの苦しみも終わって、私はすべてを忘れることができるだろうに。 ”
  ブラジルの作家、パウロ・コエーリョは『ピエドラ川のほとりで私は泣いた』で、ひとりの女性の愛の選択と神の再発見を、スペイン北部の風景のなかで詩的に描きだしました。

2012年9月14日金曜日

乱読のすすめ62-あさのあつこさんの時代小説

映画「バッテリー」 原作あさのあつこ









   池波正太郎の「娯楽性」、藤沢周平の「凛々(りり)しさ」、司馬遼太郎の「人間劇場」…いい時代小説は、時空を超えて心に響くものがあります。
   それは作家の腕前だけでなく、時代小説という現代と距離をおいた「舞台装置」が、余計な雑念を取り払い、人間の悪や正義や哀しみをより純化し、より増幅して映し出すからかもしれません。

   ところが最近の時代小説はどうもつまらない。そもそも人間の描き方が浅いせいか、せっかくの「舞台装置」を通しても、なんの増幅効果もうまない。べつに時代小説にしなくても、現代小説でも私小説でもいいのではないか。それとも、歴史ファンを取り込むことだけが目的なのか。
   そんな失望感を吹き飛ばしてくれたのが、あさのあつこさんの時代小説でした。

2012年9月12日水曜日

じじ放談12-オスプレイ配備も三党で

左・じじん党乙川議員
右・みんし党甲山議員









   みんし党・甲山議員
   「このまえ本会議で居眠りしてたら、怖い夢みたでえ」
   じじん党・乙川議員
   「なんや、奥さんが夢にまで出てきたんか」
   みんし党・甲山議員
   「それも怖いけど、ちゃうねん。オスプレイに乗って遊んでたら、突然、墜落。お陀仏や」
   じじん党・乙川議員
   「あんな危ないもん、夢でも乗ったらあかんがな」
   みんし党・甲山議員
   「日本に運んでくるときも、落ちたら危ないから、船で運んできたもんな」

墜落事故くりかえす米軍新型輸送機オスプレイ








2012年9月4日火曜日

絵本のすすめ52-パパが宇宙をみせてくれた
















   離れ離れにくらす父と子のせつなさを描いた名作「パパはジョニーっていうんだ」(絵本のすすめ24で紹介)。その絵を担当したのは、スウェーデンの人気イラストレーター、エヴァ・エリクソンです。
   エリクソンの絵をとおすと、悲しい出来事も、遠い過去の思い出のように、まあるく心に収まります。
   「パパが宇宙をみせてくれた」(ウルフ・スタルク作・BL出版)は、大好きなパパに宇宙のすがたを教えてもらう息子のお話。

2012年9月1日土曜日

「それでも日本人か」

安田浩一(講談社)










   野田総理問責決議案が可決された8月29日の参議院本会議。
   問責決議に先立って、竹島・尖閣 「上陸非難」2決議が、民主、自民、公明、みんな、生活などの賛成多数で議決。日本共産党は反対しました。
   わが党は、尖閣諸島は「日本の領有権は歴史的にも国際法上も明りょう」という立場。竹島についても、「日本の領有の正当性には根拠がある」という見解をすでに1977年に発表しています。ただ、竹島問題を解決するうえで、過去の植民地支配の根本的な清算を日本側がしっかり行うことが大事だと考えています。
   領土問題は、歴史的事実と国際法上の道理にのっとり、冷静な外交交渉によって解決をはかるべきであり、感情的な対応をエスカレートさせることは双方が自制すべきという立場から、今回の「決議」には反対しました。

   ところが、その本会議場で、自民党議員の一人が、わが党の席にむかって、「それでも日本人か、(反対なら)韓国へ行け」というヤジ、暴言をとばしました。ふだんはとても大人しい中堅議員です。私がにらみ返すと、下を向いてしまいました。

2012年8月24日金曜日

乱読のすすめ61-裸の実存















  第2次世界大戦中、ナチスの強制収容所で妻を殺され、自らも生死の境をさまよった、ウイーンの精神病理学者ヴィクトール・フランクル。フランクルの『夜と霧』は、世界的なベストセラーとして、いまも読み継がれています。この本のなかで、フランクルは、人間はどんな極限状況に追い込まれても、「生きる意味」をもち続けることが重要であり、それが最後に生死をわける決定的な要因になると述べています。

   戦後、フランクルは、「平和な時代にいるのに、生きる目標を見失う」という、新たな精神の問題にも取り組みました。フランクルの講演集『それでも人生にイエスと言う』(春秋社)は、現代人に「裸の実存」にもどるようよびかけます。

2012年8月22日水曜日

絵本のすすめ51-ちょいワル男は なぜもてる

ジャック・ガントス作 ニコール・ルーベル絵













   あくたれねこの ラルフは セイラの ねこでした。
   あくたれでも、セイラは、ラルフが すきでした。

2012年8月20日月曜日

乱読のすすめ60-自らを罪するの弁


絵 あべ弘士










   日本が敗戦をむかえた1945年の8月23日、朝日新聞は「自らを罪するの弁」という社説をかかげ、国民に真実を伝えず戦争に突入させた責任について謝罪しました。
   さらに同年11月7日には「国民と共に起たん」という社告を出し、今後は「国民の機関」としてはたらくと宣言しました。あれから67年…。

2012年8月18日土曜日

絵本のすすめ50-ゴッホ 風がはこんだ色彩

キアーラ・ロッサーニ作(西村書店)














   37才という若さで生涯をとじた天才画家ゴッホ(1853年~1890年)。ゴッホには、テオという仲のいい弟がいて、ふたりはたくさんの手紙のやりとりをしました。
  絵本「ゴッホ 風がはこんだ色彩」は、残された手紙をもとに、兄弟の深い愛情ときずなを描いた物語です。

2012年8月13日月曜日

映画のすすめ15-ドブネズミみたいに 美しくなりたい

     韓国の若手演技派女優 ペ・ドゥナ











  1995年に解散した伝説のロックグループ「ザ・ブルーハーツ」の名曲、「リンダリンダ」。

“ ドブネズミみたいに美しくなりたい   写真には写らない美しさがあるから
  リンダ リンダ リンダ リンダ リンダ…”

2012年8月8日水曜日

絵本のすすめ49-ゆくえふめいのミルクやさん

童話館出版















   だれだって、ときには、ゆくえふめいになりたくなる。

   まい朝、まい朝、四時におきて、町中のおくさんがたに、ミルクとチーズをとどけるミルクやさんが、あるとき、なにもかもいやになって…。
 

2012年8月2日木曜日

乱読のすすめ59-四つの幸せ

絵 鈴木周作











   神奈川県川崎市のN工業は学校などで使う「チョーク」をつくる会社です。
   いまから50数年前、専務だったOさんは、ある養護学校の先生から、知的障害をもつ二人の少女の就職をたのまれます。最初は断ったOさんですが、先生の熱意に押され、仕方なく雇うことにしました。

2012年7月31日火曜日

天敵、竹中平蔵


絵 あべ 弘士














   昨日、友人が、「竹中平蔵氏が、ツィッターで、大門さんのことを話していたよ」と教えてくれました。
   家に帰ってグーグルの検索で見つけたのが、10日ほど前の竹中平蔵さんの「つぶやき」。
“ 参議院の委員会で共産党の大門氏が『増税のまえにやるべきことがある・・』ではなく、『やるべきことをやれば増税は必要ない・・』、と述べた。大門氏と私では『やるべきこと』の中身は違っているが、『今回の増税必要なし』はまことに正しいと思う。大門氏と参院で論戦したことを懐かしく思い出した。 ”

   わたしも、竹中さんが小泉内閣の「看板」大臣だったころを思い出し、懐かしくなりました。

2012年7月27日金曜日

絵本のすすめ48-わたしのて

ジーン・ホルゼンタ―ラ―作(童話館)












わたしのては、こんなことが できます
ボタンを とめる ひもを むすぶ
ブラシや くしを もつ
てをならし おんがくを かなでる
えをかく きる …

2012年7月23日月曜日

乱読のすすめ58-目標の方角にむかい、その姿勢で倒れよ















   先日、高知の経済懇談会に招かれ、県の部長さんや商工会連合会、森林組合など多彩な方々と一緒に話をさせてもらいました。
   高知といえば、やっぱり坂本竜馬。司馬遼太郎さんの「竜馬がいく」(文春文庫1~8)もおもしろい。8巻までくると、「竜馬、死なないで!」と祈りながら読んでしまいます。

   この本のなかにある、龍馬の言葉が好きです。
   " 世に生を得るは事を為すにあり  "
   " 業なかばで倒れてもよい。そのときは目標の方角にむかい、その姿勢で倒れよ  "
 
   業なかばにも行ってないのに、かんたんに方角を変えてしまい、けっきょく倒れかけている、いまの民主党に捧げたい。
   もっとも、民主党にそもそも為しとげたい業などあったのか定かではありませんが。

2012年7月17日火曜日

乱読のすすめ57-君たちはどう生きるか

京都 大原三千院 わらべ地蔵










   野田総理は原発再稼働、消費税増税など国民の嫌がることを決めて、それが「決められる政治」だと自分に酔いしれており、ちょっと病的です。
  自民党の谷垣さんも人びとのくらしより自民党の復権に躍起。しかし政治屋のボスにはむかず、ケンカと握手のタイミングがわからなくなって支離滅裂状態。
   野田さんも、谷垣さんも財務大臣経験者。委員会でなんども議論したので性格はよく知っています。お二人とも実直な方でしたが、最近はどうもおかしい。もう少し落ち着いて自分を見つめてもらいたい。

   そんなお二人に読んでほしいのが、高校生のときに読んだ吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」です。

2012年7月15日日曜日

絵本のすすめ47-ごえんがあったらまたね












   人と人とが友だちになったきっかけを思うと、本当に不思議。
   佐野洋子さんの「さかな1ぴきなまのまま」(フレーベル社)は、友だちをさがしに旅にでるねこのおはなしです。けっきょく、友だちになったのは、あまり好きでなかったへびさんでした。

   佐野さんの「あとがき」も、すてきです。

2012年7月9日月曜日

消費税も金利もあげる? 動きだすサラ金議員たち










   先月末、国民の多数が反対しているにもかかわらず、民主、自民、公明の三党が合意し、消費税の増税法案を衆院で可決しました。同時に可決された「社会保障制度改革推進法」も、国民の自助努力を強調し、国の社会保障にたいする責任を放棄するもので、小泉内閣時代の社会保障の連続改悪路線への逆戻りに他なりません。
   しかし小泉政権のときは消費税の増税はありませんでした。3党が合意したのは、社会保障の連続改悪と消費税増税をセットで行うという最悪のシナリオ。3党談合政治は、あの悪名高い小泉政治よりさらに危険です。
   ただ、政治を動かすのは、結局、国民世論。「いまは増税すべきでない」をふくめ反対が7割、8割ともなれば採決強行などできなくなるでしょう。反対世論をもっと広げ参院で廃案に追い込むために頑張り抜きたいとおもいます。
  
   こういう消費税問題のドサクサにまぎれて、サラ金業界の意向をうけた民主党、自民党の一部の国会議員が、利息制限法の制限金利をなんと年30%に引き上げるための議員立法を、今国会に提出しようとしています。

2012年7月5日木曜日

絵本のすすめ46-あのときすきになったよ

「あのときすきになったよ」(教育画劇)












   小学生のころ、学校でおもらしをして、まわりの子どもたちからいじめられたことはありませんか? 
   絵本「あのときすきになったよ」(作・薫くみこ、絵・飯野和好)は、おもらしばっかりして、みんなに「しっこ」という名まえにされちゃった「まりか」と「ゆいこ」の友情物語。

   さいしょはけんかしていたふたりですが、だんだんなかよしに。そして、「ゆいこ」がおもらしをしてしまったとき、「まりか」は花びんのみずをまきちらして、ばれないようにしてくれました…。

2012年7月2日月曜日

小沢流の怪しさは

栃木県 奥日光・戦場ヶ原 
湯川ぞいに咲くレンゲツツジ









   本日、 民主党小沢グループのうち、衆院議員38人、参院議員12人が離党届を提出。 民主党が分裂しました。

   午後4時すぎ、参議院議員会館12階の男性トイレ。民主党の重鎮で大臣経験者のAさんと、離党届を出した岩手県出身のYさん、そして私の三人が一緒になりました。

2012年7月1日日曜日

絵本のすすめ45-いぬも あつけりゃ ぼうっとする











   関西弁の「いちびる」の意味は、「ふざける」「調子にのって、はしゃぐ」。その名詞形である「いちびり」は、「お調子者、目立ちたがり屋」などと、ネット辞書などでは説明されています。
   しかし、それだけではどうもニュアンスが伝わっていない。京都うまれのわたしの勝手な定義では、「みんながまじめな顔で話をしているときほど、冗談をいいたくなってしまう、どうしよもない、あまのじゃくな性分」「おもろかったらええやんけというお笑い至上主義」といった感じ。
   大阪出身の絵本作家、長谷川義史さんの「いろはのかるた奉行」(講談社)は、まさに関西人いちびり絵本です。

2012年6月29日金曜日

東京新聞をみならえ










   水曜日のブログをみて、東京杉並区のWさんから、つぎのようなメールをいただきました。

   「本当に朝日新聞の転落ぶりは著しく、反面、東京新聞の活躍が目立ちます。先日、脱原発宣言のつどいがあり、福島の方のお話の中に取材にきたという東京新聞の記者の方の話がありました。原発関連の意思表示を明確にしているため広告が減っているが、信念にもとづいてこれからも記事を書いていく…と。会場いっぱいの拍手でした」

   そうなんです。東京新聞は、消費税問題でも国民の立場を忘れていない。

2012年6月27日水曜日

天に声あり、人をして語らしむ











   朝日新聞のコラム「天声人語」は、かつては名文が多く大学入試によく出題されるとのことで、受験生の頃よく読んだものでした。
   天声人語の意味は、「天に声あり、人をして語らしむ」とのこと。しかし最近は、ほんとうに「天の声」なのか、ただの大新聞の独善ではないのかと、首くびを傾(かし)げることが多い。

2012年6月25日月曜日

乱読のすすめ56-余生ではない新たな生へ

与謝野晶子
(1878-1942)











   “ やわ肌の あつき血汐にふれも見で さびしからずや 道を説く君 ”

   明治34年、女性の奔放な情感をうたいあげた与謝野晶子の歌集『みだれ髪』は、世の中に大きな衝撃をあたえました。

   近代以降の短歌に、はじめて「恋愛」を位置づけた『みだれ髪』。斎藤茂吉は『みだれ髪』を、「早熟の少女が早口にものいうごとき歌風であるけれども…みなこの歌集の出現に驚異の眼をみはったのである」と絶賛しています。
   なにが衝撃的なのか。それは、きれいごとではない、ありのままの生のすがたを表現したからでしょう。

   その斎藤茂吉も、晩年の歌集『つきかげ』で、それまであまり歌に詠まれなかった老人のありのままのすがた、おもいを歌にしました。
   “ 欠伸(あくび)すれば 傍にいる孫真似す 欠伸というは善なりや悪か ”

   老いてますます伸びやかに、余生ではない新たな生へ…小高賢「老いの歌」(岩波新書)は、短歌をとおし、高齢化時代の生き方をかんがえます。

2012年6月22日金曜日

じじ放談11-信念やないで、おんねんやで

じじん党乙川議員とみんし党甲山議員








   じじん党・乙川議員
   「やあ、甲山議員。ワシの新しい選挙ポスター見て見て、なかなかええやろ 」
  みんし党・甲山議員
   「ほう、えらい若う、写ってるな」