2012年5月11日金曜日

乱読のすすめ53-なんのための強制ですか、橋下さん
















   9日の私のブログをみて、大阪にいる友人が、橋下徹氏のとんでもない映像が「Youtube」で公開されていると知らせてくれました。

   5月8日の囲み取材で、毎日放送(MBS)の女性記者が、橋下大阪市長にたいし、学校における「君が代」の起立・斉唱について、「一律に歌わせることまで強制することをどう思うか?」と見解をただしました。ところが橋下市長は、あくまでも「職務命令」であると返答しただけで、あとは「教育委員会に聞け」の一点張り。しかも女性記者にたいし、「起立・斉唱の命令は誰が誰に出したものか?」「起立・斉唱命令という言葉の中に斉唱の命令は入っているのかいないのか?」などと、逆質問を連発。答えられない記者にたいし、「勉強不足、ここに来るな」と口汚く罵倒しました。

女性記者を罵倒する橋下徹氏(5月8日)










   記者を相手に政治家がキレるのは、痛いところを突かれたか答えたくないことをズバリ聞かれたとき。橋下氏の傲慢さもここまでくると醜悪。不快感だけが残る映像です。
http://www.youtube.com/watch?v=3OKlJeer0PQ&t=0m45s

   ところが、この映像は橋下氏みずから「Youtube」で公開し、何十万回と再生され、ネット上では、「バカ記者」など女性記者にたいする低俗なバッシングが拡大しています。おぞましさがおぞましさを呼んでいるのです。

   岩波新書の新刊、田中伸尚さんの「ルポ 良心と義務-日の丸・君が代に抗う人びと」は、国旗・国歌法の制定から13年がたち、学校現場がどう変質させられたか。また、苦悩を抱えながらも良心の自由を求め、強制に抗う教師や生徒、市民の姿をリアルに描いています。とくに2002年、札幌南高で「君が代」強制に反対して、生徒たちが立ち上がった話は感動的です。

田中伸尚 「良心と義務」












    終章は、「君が代」強制をめぐる傑作喜劇「歌わせたい男たち」をうみだした劇作家の永井愛さんへのインタビュー。
   永井愛さんはつぎのように語っています。
   「…日本で起きているこの問題のおかしさは、処分する側と、される側だけが争っていて、そうじゃない人は関係ないって態度でいることですね。すごく巧妙なのは、斉唱や伴奏の拒否を『職務命令違反問題』にしたことで、決して愛国心が足りないなんていう言い方はしない。職務命令という決まりに従わないのは、先生としてまずいだろう。そんな先生がいたんじゃ、子どもがルールを守らなくても、注意できないじゃないかという理屈にすり替えてしまう。極力、思想、良心の問題にはしないようにしていくんですね」
   「なかには『君が代』が大好きで率先して歌っていたけれど、それを強制して抵抗したら処分というのは許せないと(強制は違憲だとする訴訟の)原告になった先生がいました。…私の思想、良心の自由と同じように、あなたの思想、良心の自由も守るよというのが民主主義であり、その反対のことがあってはならない」
   「たとえ国民主権を高らかに謳う国歌ができたとしても、それを学校で押し付けて、『君が代』好きで民主主義の歌は歌いたくないという先生を処分するのなら、今と何も変わりません。ここを混同しないためにも、『日の丸・君が代』の是非とは別に、強制をもっと問題にしなくてはいけない。夫のスーツを見上げてラブソングを歌うことを義務づけられた妻は、夫への自発的な愛情からどんどん遠のいていくでしょう。強制こそ、人からの愛や尊敬を得られなくしてしまう手段だということに、そろそろ支配者たちは気づくべきです」