2012年9月28日金曜日

それは安酒の酔いに似ている


埼玉県秩父癒しの森「花の回廊」
コスモス満開










   “ 国境線というものが存在する以上、残念ながら(というべきであろう)領土問題は避けて通れないイシューである。しかしそれは実務的に解決可能な案件であるはずだし、また実務的に解決可能な案件でなくてはならないと考えている。 ”
   “ 領土問題が実務的課題であることを超えて、「国民感情」の領域に踏み込んでくると、それは往々にして出口のない、危険な状況を出現させることになる。それは安酒の酔いに似ている。 ”

  …今朝の朝日新聞に作家の村上春樹さんが「魂の行き来する道筋」と題するエッセイを寄稿しています。

2012年9月26日水曜日

映画のすすめ16-Never Let Me Go(わたしを離さないで)

映画「わたしを離さないで」
主演 キャリー・マリガン











   昨日、仙台から帰る新幹線の中で、カズオ・イシグロの小説『わたしを離さないで』(ハヤカワ文庫)を読みました。
  臓器移植と倫理の問題を問いかけた衝撃作。ときどきメールをいただく東京のUさんのお薦めです。
 
   イギリスの片田舎にある寄宿学校「ヘールシャム」では、臓器提供のために集められた「ドナー・チャイルド」たちが、外界から遮断された共同生活を送っていました。…

※「ドナー・チャイルド」
 骨髄や臓器の移植が必要な病気に冒されている兄や姉に骨髄、臓器を提供するために、遺伝子操作を施し人工授精によってうまれた弟や妹のこと。大きな倫理問題をはらんでいる。
   『わたしを離さないで』は、「ドナー・チャイルド」が社会的につくられ、社会的に「提供」されるという「架空世界」を描いています。

2012年9月24日月曜日

乱読のすすめ64-制服の詩人

北原白秋
(1885-1942)











   『からたちの花』 1924年
   からたちの花が咲いたよ。 白い白い花が咲いたよ。…
   からたちのそばで泣いたよ。 みんなみんなやさしかったよ。

   『紀元二千六百年頒』 1941年
   ああわが民族の清明心。正大、忠烈、武勇、風雅、廉潔の諸徳。精神は一貫する。
   伝統は山河と交響し、臣節は国土に根生ふ。大儀の国日本、日本に栄光あれ。…
   大政翼賛の大行進を始め。行けよ皇国の盛大へ向かって、世界の新秩序へ向かって、
   人類の 福祉に万邦の融和に向かって…。

   どちらも、北原白秋の作品です。
   抒情詩人と戦争翼賛詩人の両面をもつ白秋。 しかし、白秋だけでなく、当時の日本国民のなかに「抒情」と「翼賛」は自然に同居していたのではないか。中野敏男さんは近著「詩歌と戦争」(NHKブックス)のなかで、戦争に向かって進んだ民衆の同時代的経験と「責任」を問いかけます。

2012年9月21日金曜日

絵本のすすめ53-おかめ列車


さく いぬんこ 長崎出版














   NHK教育テレビのこども番組ではおなじみ、イラストレーターいぬんこさんの絵本。
   こういう絵とおはなしを描ける人がいたんだ!
   昭和生まれのいちびり関西人としては、まことに惹きつけられてしまいます。

2012年9月18日火曜日

乱読のすすめ63-ピエドラ川のほとりで私は泣いた

訳・山川紘矢・亜希子 地湧社














   “  ピエドラ川のほとりにすわって、私は泣いた。この川の水の中に落ちたものは、木の葉も虫も、鳥の羽さえ、岩に姿を変えて、川底に沈むと言い伝えられている。心を胸の中から取り出して、流れの中に投げ込めるものならば、恋もこの苦しみも終わって、私はすべてを忘れることができるだろうに。 ”
  ブラジルの作家、パウロ・コエーリョは『ピエドラ川のほとりで私は泣いた』で、ひとりの女性の愛の選択と神の再発見を、スペイン北部の風景のなかで詩的に描きだしました。

2012年9月14日金曜日

乱読のすすめ62-あさのあつこさんの時代小説

映画「バッテリー」 原作あさのあつこ









   池波正太郎の「娯楽性」、藤沢周平の「凛々(りり)しさ」、司馬遼太郎の「人間劇場」…いい時代小説は、時空を超えて心に響くものがあります。
   それは作家の腕前だけでなく、時代小説という現代と距離をおいた「舞台装置」が、余計な雑念を取り払い、人間の悪や正義や哀しみをより純化し、より増幅して映し出すからかもしれません。

   ところが最近の時代小説はどうもつまらない。そもそも人間の描き方が浅いせいか、せっかくの「舞台装置」を通しても、なんの増幅効果もうまない。べつに時代小説にしなくても、現代小説でも私小説でもいいのではないか。それとも、歴史ファンを取り込むことだけが目的なのか。
   そんな失望感を吹き飛ばしてくれたのが、あさのあつこさんの時代小説でした。

2012年9月12日水曜日

じじ放談12-オスプレイ配備も三党で

左・じじん党乙川議員
右・みんし党甲山議員









   みんし党・甲山議員
   「このまえ本会議で居眠りしてたら、怖い夢みたでえ」
   じじん党・乙川議員
   「なんや、奥さんが夢にまで出てきたんか」
   みんし党・甲山議員
   「それも怖いけど、ちゃうねん。オスプレイに乗って遊んでたら、突然、墜落。お陀仏や」
   じじん党・乙川議員
   「あんな危ないもん、夢でも乗ったらあかんがな」
   みんし党・甲山議員
   「日本に運んでくるときも、落ちたら危ないから、船で運んできたもんな」

墜落事故くりかえす米軍新型輸送機オスプレイ








2012年9月4日火曜日

絵本のすすめ52-パパが宇宙をみせてくれた
















   離れ離れにくらす父と子のせつなさを描いた名作「パパはジョニーっていうんだ」(絵本のすすめ24で紹介)。その絵を担当したのは、スウェーデンの人気イラストレーター、エヴァ・エリクソンです。
   エリクソンの絵をとおすと、悲しい出来事も、遠い過去の思い出のように、まあるく心に収まります。
   「パパが宇宙をみせてくれた」(ウルフ・スタルク作・BL出版)は、大好きなパパに宇宙のすがたを教えてもらう息子のお話。

2012年9月1日土曜日

「それでも日本人か」

安田浩一(講談社)










   野田総理問責決議案が可決された8月29日の参議院本会議。
   問責決議に先立って、竹島・尖閣 「上陸非難」2決議が、民主、自民、公明、みんな、生活などの賛成多数で議決。日本共産党は反対しました。
   わが党は、尖閣諸島は「日本の領有権は歴史的にも国際法上も明りょう」という立場。竹島についても、「日本の領有の正当性には根拠がある」という見解をすでに1977年に発表しています。ただ、竹島問題を解決するうえで、過去の植民地支配の根本的な清算を日本側がしっかり行うことが大事だと考えています。
   領土問題は、歴史的事実と国際法上の道理にのっとり、冷静な外交交渉によって解決をはかるべきであり、感情的な対応をエスカレートさせることは双方が自制すべきという立場から、今回の「決議」には反対しました。

   ところが、その本会議場で、自民党議員の一人が、わが党の席にむかって、「それでも日本人か、(反対なら)韓国へ行け」というヤジ、暴言をとばしました。ふだんはとても大人しい中堅議員です。私がにらみ返すと、下を向いてしまいました。