2012年10月8日月曜日

映画のすすめ17-散り行く花


朝もやの曼珠沙華(埼玉県巾着田)











   先日、朝5時に起きて、『しんぶん赤旗』でも紹介された埼玉県日高市にある巾着田(きんちゃくだ)曼珠沙華(まんじゅしゃげ)公園に行きました。早朝にもかかわらず、たくさんの人が「天上の花」曼珠沙華の赤いじゅうたんを楽しんでいました。
   ただ、ピークは過ぎていたようで、よく見ると色あせた曼珠沙華がちらほら。「ちょっと遅かったな」という声があちこちで聞かれました。午後から仕事なので、約22ヘクタールの公園を早足でまわり、写真を撮って帰りました。

   花が散るさまは、いろいろに表現されます。
   桜は散る  梅はこぼれる 椿は落ちる 牡丹はくずれる…
   奈良、平安時代の女流歌人たちは、みじかき花のいのちを見つめ、もっともふさわしい表現をさがしだしました。咲くことだけでなく、散ることにも趣きを感じる民族性です。
   しかし、花の多くはそんなにきれいに散りません。
   たとえばバラは、優雅に香り高く咲いたあと、枯れていつまでも枝にしがみついている。曼珠沙華も、盛りのあとはしだいに色を失いながら、しおれた姿をさらけだします。
   人生もおなじ。潔くきれいに散れればいいが、簡単ではない。そう思えば、色あせた曼珠沙華にも愛しさを感じるものです。

 ところで、散る花で思い出したのが、「映画の父」と呼ばれるディビット・W・グリフィス監督の名作『散り行く花(BROKEN BLOSSOMS)』(1919年)。
 仏教を広めるため中国からロンドンにやってきた青年チェンハンは、いまは挫折して阿片を吸って暮らすスラム街の商人。近所に住む心優しい少女リリーはボクサーの養父に虐待されていました。リリーを可愛く思うチェンハン。悲劇が悲劇をうむ展開のなかで、リリーの運命は…。
   せつない音楽と役者の濃い演技、サイレント映画の真髄ここにあり。映画好きにはたまらない作品です(DVDも販売されています)。

サイレントの名女優
リリアン・ギッシュ








 
   ちなみにグリフィス監督の「イントレランス(不寛容)」(1916年)は、人間の心の狭さを糾弾した大作。この作品は、アメリカでは不評だったものの、ヨーロッパ諸国では絶賛され、とくにレーニンはソ連全土で上映するよう呼びかけたそうです。