2012年10月21日日曜日

映画のすすめ18-親切はさっと皿にもれ









   映画好きの友人が「絶対おもしろい!」というので、フランス映画「最強のふたり」を観に行きました。 なるほど、これは傑作。フランスはもちろんヨーロッパ各国で空前の大ヒットを記録したのもうなずけます。
   パラグライダーの事故で首から下が麻痺してしまった富豪の中年男フィリップと、介護役として雇われた前科のある黒人青年ドリスの、ユーモアに富んだ実話にもとづく友情物語。おもしろいだけでなく、人間の尊厳とはなにか、介護とはなにかについても考えさせられます。

介護者ドリス(左)と富豪フィリップ(右)








   重いテーマにもかかわらず、名優フランソワ・クリュゼ(フィリップ役)の抑えた演技と、コメディアンのオマール・シー(ドリス役)の軽妙洒脱さが見事に溶け合って、「さらさら」とした空間をつくっています。それがかえって観る者の共感をよぶのだとおもいます。

   映画館で買ったパンフレットに、評論家の柴山幹郎さんが、つぎのように書いていました。
   「親切や友情はもたついてはいけない。くどくど言いよどんだり、のろのろと手を貸したりすると、親切や友情に湿気がこもる。すると、偽造された情感が入り込む。作り笑い、嘘泣き、おためごかし。駄目だ。親切には素早く火を通せ。親切はさっと皿に盛れ。ドリスにはそれができたのだ」