2013年4月10日水曜日

「禁じられた火遊び」を超えて―賭事師(かけごとし)黒田日銀どこへいく










 
  「株が上がった、上がった」と、株を持っていない人まで喜んでいる、へんな時代になりました。これはまさに「バブル」の熱気。
   日本銀行の黒田総裁(写真)が、大量の国債購入など「異次元金融緩和」を決めたことで、株高、円安がさらに進行。長期国債の金利が乱高下するなどの混乱もうんでいます。
   「異次元緩和」が発表される前の3月28日、参議院財政金融委員会ではじめて黒田総裁に質問しました。
   (大門)
日本共産党の大門でございます。黒田さん、良かったですね、今日は大体歓迎ムードで。
私はちょっと違うんですけれども。(場内笑い)。
   (大門)
 これから物価が2%になるまで、無制限に何でもやるということですが、例えば国債を日銀が150兆円購入しても2%ならなかった、200兆円購入してもならなかった。じゃ、300兆円でも買っていくと、本気でお考えになっているのか。
   (黒田総裁)
   2%の物価安定目標を達成するというのが日本銀行としての最大の使命であるというふうに認識しておりまして、それをできるだけ早期に実現するためにできることは何でもやるということでございます。……目的を達成するまでやれることは何でもやるという姿勢でいかないと、物価安定という目標が達成できなければ最大の使命が達成できないということになってしまいますので、中央銀行としては最大の使命が物価の安定、もちろん金融システムの安定ということも非常に重要な使命でございますが、この二つはどこの中央銀行でも最大の使命として、その達成のためにその時々で必要なことは何でもやると、できることは何でもやるという方向でやってきているし、やってこないと、困難な状況でその使命を達成するということがむしろ難しくなってしまうというふうに思っております。
   (大門)
   決意を示すとか精神論的なものならばともかく、ほんとうにやったら、麻生さんも安倍さんもやめてくれと止めにはいるんじゃないか。……
                                                    <以下、興味のある方は議事録をご覧ください>
  
  とにかく、国の借金のカタである国債を中央銀行がどんどんお札を発行して買い上げるのは、タコが自分の足を食うのと同じです。日銀保有の国債はまもなく100兆円を超え、すでに太ももくらいまで食っちゃってる。このうえ中央銀行としての財政規律を投げ捨て、頭までまるかじりしようというのですから、まさに「異次元」の領域に入ったといわれるわけです。

  しかし、今の急激な円安、株高を主導したのは海外のヘッジファンド(投機集団)です。かれらはいつも投機の「材料」を探しています。安倍さんが「大胆な金融緩和」発言したとき、それを「材料」に、相場を仕掛け、円安、株高に誘導しました。そして黒田総裁の「異次元緩和」をつぎの「材料」に、さらに相場を誘導。かれらは一般投資家も巻き込んで価格をつりあげるだけつりあげて、どこかで売り抜けて利ざやを稼ぐのが目的です。

 このままいけば、早晩、国債の大量購入という「材料」も、投機集団に飽きられるでしょう。かれらに新しい「材料」を与えつづけて円安・株高を維持するためには、日銀がつぎは「企業の株を買います」「不動産も買います」「外債も買います」と、どんどんエスカレートしていくしかない…そんな泥沼にはまっていく危険性があります。

 それにしても、こりもせず、「バブル」が好きな人のなんと多いことか。自分だけは損をしないで逃げ切れると思い込む「ババ抜きゲーム」がすでに始まっているように思えます。「バブル」なら早くはじけた方がいい。長引いて膨らめば膨らむほど、世の中全体に被害を広げるからです。

 かつて、日銀が国債購入をはじめたとき、「禁じられた火遊び」と揶揄(やゆ)する人がいましたが、もはや火遊びをこえて「放火魔」に近い。
 その度胸の良さを評し、「勝負師・黒田」と持ち上げるエコノミストもいますが、「財政規律は政府の仕事」と一方的に責任転嫁する姿勢はいただけない。わたしには「賭事師(かけごとし)」にしか見えません。


 







 実体経済がよくなった反映としての株高は歓迎です。
  学者で生真面目だった白川前日銀総裁と、日本経済についてそういう真摯(しんし)な議論をした頃がなつかしい。

   どちらの総裁が正しかったか、いずれ歴史が評価をくだすでしょう。